2009年03月30日
スペイン巡礼の旅30 リタイアの危機
オスピタル・デ・オルビゴでの朝、アルベルゲの玄関に降りていくと、マリアノとピエールがしっかりハグしあって、肩を叩き合っていました。
(どうしたの、今日は誰かの誕生日なのかな?)なんて思いながらそばに行くと、ピエールが神妙な顔をして言いました。
「スエルテ、いろいろありがとう、僕は今日ここで一旦やめるけど、君達は無事最後までがんばって!」
ピエールはここに来て足の調子が悪く、今朝一緒に出発は出来ないというのです。一度病院で診察を受けてから、この先続けるか決めるというのです。
ここ数日は我慢して歩いていたのかもしれません。
今ここでお別れだなんて!そんなのいやだって思ったけれど、無理に歩こうとは言えません。マリアノもルイシも同じ気持ちだったと思います。
4人でしばらく別れを惜しんでいましたが、やがて、手を振るピエールを何度も振り返りながらマリアノとルイシと私の3人はアルベルゲを後にしました。
日差しの強い乾いた道を歩きながら、ピエールと過ごしたここ一週間のことを考えました。
いつも微笑んでいたやさしいピエール。いてくれると、とてもみんなの気持ちがなごむムードメーカーでした。本当に寂しくなってしまったなぁと、つくづく残念に思いました。
3人それぞれ黙って、寂しい気持ちを引きずるように歩き続けました。
お昼に、通り沿いの街角にあるバルのテラス席で休憩しました。
いつものようにボカディージョとカフェ・コンレチェで腹ごしらえして、そろそろ出発しようかという頃、遠くに、こちらに向って歩いてくる巡礼者がいるのに気が付きました。
「あれ、ピエールじゃない!」
「そうだよ!ピエールだ!」
わたし達3人は立ち上がって、ピエールが来るのを迎えました。
ピエールは、朝わたし達と別れてから少し休み、やっぱりもう少しがんばってみる決心をして、歩き出したのです。何とか私達に追いつこうと、休まずに歩いて来たようです。
ピエールの体調を気にかけながらも、またここで再会出来たことがとにかく嬉しくて、4人はまるで子供のようにはしゃぎました。
無理しないで、ゆっくり、一緒に最後まで行こうよ。きっと大丈夫だよ!
バルでピエールも小休止して、それからまた4人揃って出発しました。
まず目指すは、アストルガです。
アストルガは人口一万人以上のちょっとした観光地です。
教会前の広場は程よい賑わいで、初めて街に訪れた旅人をワクワクさせてくれるエネルギーを感じます。まず美しい大聖堂前に行ってみました。
この大聖堂は是非とも見学しようと、学識の高いルイシが私たちを誘って見学者入り口まで行きました。しかし、ちょうど午後2時を回ったところで、お昼の休憩時間に入っていました。
ルイシは係の人に、私達は巡礼者で先を急いでいることを伝え、外国人である私やピエールにとっては、このアストルガに来るチャンスはもう無いだろうから、ほんの少しでいいから見学させて欲しいと懇願していましたが、答えはノーで、4時に来てくださいの一点張りでした。そのうちルイシは逆ギレして、こんな風に融通が利かないからスペインは国際的にダメなのよ。まったく、この古臭い考え方何とかした方がいいわよ!みたいなことを言い始めました。さすが、戦う女です。

気持ちの収まらないルイシをなだめながら、私達はアストルガを後にして、また乾いた巡礼の道に戻って行きました。
午後4時ごろ、何もない田舎道の小さなバルで休憩にしました。みんなボカディージョを注文していましたが、私は持っていたパンをミルクコーヒーに浸して食べました。
「あとどのくらい歩くの?」とマリアノに聞くと、12㎞位だと言われ、がっくりした私はひとり外に出るとベンチに座って半べそをかきました。
「もうヤダ~!あと12km、3時間なんて歩きたくないよ!」
そう独り言云いながらくじけていると、少し離れた所でこの村の住人らしい少年がこっちを見ているのに気付きました。私はちょっと恥ずかしくなって、姿勢を正し、泣いても何にもならない、とにかく自分の足で歩くしかないんだと思いを切り替えて、もう一度バルに戻りました。
そこからの3時間は本当にきつかったです。かなり暑かったので、傘を差して歩いて行きました。
リタイヤした方がいいのはピエールより私なんじゃないかと思うほどでした。
途中自転車の巡礼者がわざわざ止まって、「大丈夫?もうちょっとのはずだからがんばって」と声をかけてくれました。そして今日の目的地、ラナバル・デル・カミーノの町の入り口で、マリアノ、ルイシ、ピエールの3人が私の到着を待っていてくれて、4人揃って町に入りました。
この日は36km歩いたようです。
アルベルゲに着いて足を止めると、骨の芯から震えるような疲労に包まれました。
今日のところは何とかたどり着けましたが、試練はまだまだ続くのでした。
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スペイン巡礼日記29
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スペイン巡礼の旅1
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(どうしたの、今日は誰かの誕生日なのかな?)なんて思いながらそばに行くと、ピエールが神妙な顔をして言いました。
「スエルテ、いろいろありがとう、僕は今日ここで一旦やめるけど、君達は無事最後までがんばって!」
ピエールはここに来て足の調子が悪く、今朝一緒に出発は出来ないというのです。一度病院で診察を受けてから、この先続けるか決めるというのです。
ここ数日は我慢して歩いていたのかもしれません。
今ここでお別れだなんて!そんなのいやだって思ったけれど、無理に歩こうとは言えません。マリアノもルイシも同じ気持ちだったと思います。
4人でしばらく別れを惜しんでいましたが、やがて、手を振るピエールを何度も振り返りながらマリアノとルイシと私の3人はアルベルゲを後にしました。
日差しの強い乾いた道を歩きながら、ピエールと過ごしたここ一週間のことを考えました。
いつも微笑んでいたやさしいピエール。いてくれると、とてもみんなの気持ちがなごむムードメーカーでした。本当に寂しくなってしまったなぁと、つくづく残念に思いました。
3人それぞれ黙って、寂しい気持ちを引きずるように歩き続けました。
お昼に、通り沿いの街角にあるバルのテラス席で休憩しました。
いつものようにボカディージョとカフェ・コンレチェで腹ごしらえして、そろそろ出発しようかという頃、遠くに、こちらに向って歩いてくる巡礼者がいるのに気が付きました。
「あれ、ピエールじゃない!」
「そうだよ!ピエールだ!」
わたし達3人は立ち上がって、ピエールが来るのを迎えました。
ピエールは、朝わたし達と別れてから少し休み、やっぱりもう少しがんばってみる決心をして、歩き出したのです。何とか私達に追いつこうと、休まずに歩いて来たようです。
ピエールの体調を気にかけながらも、またここで再会出来たことがとにかく嬉しくて、4人はまるで子供のようにはしゃぎました。
無理しないで、ゆっくり、一緒に最後まで行こうよ。きっと大丈夫だよ!
バルでピエールも小休止して、それからまた4人揃って出発しました。
まず目指すは、アストルガです。
アストルガは人口一万人以上のちょっとした観光地です。
教会前の広場は程よい賑わいで、初めて街に訪れた旅人をワクワクさせてくれるエネルギーを感じます。まず美しい大聖堂前に行ってみました。
この大聖堂は是非とも見学しようと、学識の高いルイシが私たちを誘って見学者入り口まで行きました。しかし、ちょうど午後2時を回ったところで、お昼の休憩時間に入っていました。
ルイシは係の人に、私達は巡礼者で先を急いでいることを伝え、外国人である私やピエールにとっては、このアストルガに来るチャンスはもう無いだろうから、ほんの少しでいいから見学させて欲しいと懇願していましたが、答えはノーで、4時に来てくださいの一点張りでした。そのうちルイシは逆ギレして、こんな風に融通が利かないからスペインは国際的にダメなのよ。まったく、この古臭い考え方何とかした方がいいわよ!みたいなことを言い始めました。さすが、戦う女です。

気持ちの収まらないルイシをなだめながら、私達はアストルガを後にして、また乾いた巡礼の道に戻って行きました。
午後4時ごろ、何もない田舎道の小さなバルで休憩にしました。みんなボカディージョを注文していましたが、私は持っていたパンをミルクコーヒーに浸して食べました。
「あとどのくらい歩くの?」とマリアノに聞くと、12㎞位だと言われ、がっくりした私はひとり外に出るとベンチに座って半べそをかきました。
「もうヤダ~!あと12km、3時間なんて歩きたくないよ!」
そう独り言云いながらくじけていると、少し離れた所でこの村の住人らしい少年がこっちを見ているのに気付きました。私はちょっと恥ずかしくなって、姿勢を正し、泣いても何にもならない、とにかく自分の足で歩くしかないんだと思いを切り替えて、もう一度バルに戻りました。
そこからの3時間は本当にきつかったです。かなり暑かったので、傘を差して歩いて行きました。
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Posted by スエルテ at 18:11│Comments(6)
│スペイン巡礼の旅
この記事へのコメント
こんにちは。
スペイン巡礼の旅シリーズを読むといつも元気がでます!
スペイン巡礼の旅シリーズを読むといつも元気がでます!
Posted by とんちゃん at 2009年03月30日 18:35
!Cuanto tiempo!
巡礼日記もリタイヤの危機かと思いました^^)
いろいろありますね。ピエールは最後まで歩けたんだろうか?旅は人生の縮図って、本当ですよね。
僕もこの旅日記を読んで、いつか行くはずの巡礼への思いを募らせています!
スエルテさん、いつもありがとう!
でもその前に日本の巡礼路も知っておきたくて、5月の連休に四国のへんろ路を歩くことにしました。
巡礼日記もリタイヤの危機かと思いました^^)
いろいろありますね。ピエールは最後まで歩けたんだろうか?旅は人生の縮図って、本当ですよね。
僕もこの旅日記を読んで、いつか行くはずの巡礼への思いを募らせています!
スエルテさん、いつもありがとう!
でもその前に日本の巡礼路も知っておきたくて、5月の連休に四国のへんろ路を歩くことにしました。
Posted by hiro at 2009年03月30日 23:14
とんちゃん、こんにちは!
そう言っていただけると、うれしいです。
ありがとうございます(^^)
そう言っていただけると、うれしいです。
ありがとうございます(^^)
Posted by スエルテ
at 2009年03月31日 16:24

hiroさん、
すいません、ご心配おかけしちゃって(^_^;)
必ず最後まで書きますのでお付き合いくださいね。
四国の巡礼もいいですね。
もしかするとスペインよりきついかもしれませんよ~
いい旅になりますように!
すいません、ご心配おかけしちゃって(^_^;)
必ず最後まで書きますのでお付き合いくださいね。
四国の巡礼もいいですね。
もしかするとスペインよりきついかもしれませんよ~
いい旅になりますように!
Posted by スエルテ
at 2009年03月31日 16:27

この巡礼日記 私も楽しみにしています。
吸い込まれるように読んでしまいます。
私にはきっと無理だろうけど 頑張るゾと思うのです。
巡礼はもう半分くらいの処に来たのでしょうか?
吸い込まれるように読んでしまいます。
私にはきっと無理だろうけど 頑張るゾと思うのです。
巡礼はもう半分くらいの処に来たのでしょうか?
Posted by もりひめ
at 2009年04月02日 22:15

もりひめさん
ここまでで、すでに3分の2まで歩き終えています。
600kmくらい歩いて、もうかなりガタが来ているところです。
ここまでで、すでに3分の2まで歩き終えています。
600kmくらい歩いて、もうかなりガタが来ているところです。
Posted by スエルテ
at 2009年04月03日 19:16
