2008年08月11日
スペイン巡礼の旅21 カストロへリスでの奇遇な出来事 その2
隣りのベッドに横たわる日本人男性の顔を見て、私は自分の記憶のアルバムを一気にめくり始めました。そして程なく、一枚の映像と合致しました。
「あのー、私20年くらい前に東京の○○印刷のCTS事業部で2年くらいバイトしていたことがあるんですけど…」
「ああ、私は2年前に○○印刷を定年退職したのですよ」
やっぱり!その男性は昔若い頃アルバイトをしていた会社の、同じ事業部のお隣三課のI課長だったのです。
「私は二課だったので覚えていらっしゃらないと思うのですが、三課のキヨミちゃんと同じ頃お世話になっていて、彼女とは仲がよかったんです」
「キヨミね、あの茨城弁の元気な子、覚えてますよ」
スペインの片田舎のアルベルゲで、知ってる日本人とこんな会話をするなんて、夢にも思わぬことでした。
20年前に知っていたI課長は、同じ課ではなかったので親しくはなかったのですが、会えば朝夕の挨拶を交わしていたし、アルバイト仲間の間では温厚で物静かないい課長だと評判の方でした。
昔からスペインは好きで、NHKのラジオ講座などを長年聴いて、独学で日常会話くらいは話せるようになったそうです。人は見かけによらぬもの。そんな一面があるなんて全く知りませんでした。
I元課長と話しているところに、ホアンがカニャ(生ビール)でも飲みに行こうと誘いに来ました。そこでこのいきさつをホアンに話して聞かせようと思いましたが、私のスペイン語で伝えるより早いと、Iさんに話してもらいました。
ホアンは感心して、
「なんていう偶然なんだろう!俺たちスペイン人だってなかなかよその土地で知り合いになんて会わないのに、あなた達二人、国からこんな遠く離れた所で再会するなんて、こりゃ驚きだな」と言いました。
Iさんとルイシおばさんも誘って、アルベルゲの隣のバルで軽く乾杯しました。
Iさんからは、当時仲がよかった他の営業の社員さんのその後の事などを聞かされました。素敵だったAさんは結婚して間もなく転職したとか、Bさんは5年前に亡くなったとか・・・私の知らないところで人々の人生は刻一刻と変わって行き、そのことを図らずもこういった形で知るなんてね。
Iさんの今回の巡礼は、スペインのロンセスバジェスからレオンまでの予定とのこと。
無理せず、続きは来年のお楽しみにするそうです。一日の歩行距離は20km以内にして、ゆっくり歩いて多くの人と会話を楽しむようにしているそうです。
さて、グラスのビールがなくなるころにはホアンもすっかり落ち着いた様子で、今夜はチャンピオンズリーグの決勝があるから忘れるなよ、と私に言いました。
「マリアノはどうするの?」
「あんなヤツ知らないよ!」
そうは言ってみたものの、それから3分もしないうちに
「スエルテ、あとでマリアノに電話するから、8時前にみんなで集まってサッカー観戦でいいかい?」
私は「Si!!」(イエス!)と元気よく返事をしました。

約束の時間に、サッカー中継をやっている別のバルに行くと、いつもの笑顔でマリアノがやってきました。
「今日はよく歩いたね、スエルテ、調子は大丈夫?」
そう言って、肩をたたいてくれます。
心配していたホアンの方も、さっきまであんなに怒っていたのがうそのように、
「俺たちのアルベルゲにスエルテの昔のアルバイト先の知り合いがいたんだよ、すごい偶然だよなぁ!」
なんて、普通に話しています。
やれやれ、大変な事にならないで よかった、よかった。
サッカーは、チャンピオンズリーグ決勝のモナコ対ポルトの試合でした。最後まで見たかったけれど、いつものように前半戦が終るとバルを出て、それぞれのアルベルゲに戻って行きました。
-つづく-
前回のお話↓
スペイン巡礼の旅20カストロへリスでの奇遇な出来事 その1
続きを読む↓
スペイン巡礼の旅22
スペイン巡礼の旅を初めから読む↓
スペイン巡礼の旅 1
「あのー、私20年くらい前に東京の○○印刷のCTS事業部で2年くらいバイトしていたことがあるんですけど…」
「ああ、私は2年前に○○印刷を定年退職したのですよ」
やっぱり!その男性は昔若い頃アルバイトをしていた会社の、同じ事業部のお隣三課のI課長だったのです。
「私は二課だったので覚えていらっしゃらないと思うのですが、三課のキヨミちゃんと同じ頃お世話になっていて、彼女とは仲がよかったんです」
「キヨミね、あの茨城弁の元気な子、覚えてますよ」
スペインの片田舎のアルベルゲで、知ってる日本人とこんな会話をするなんて、夢にも思わぬことでした。
20年前に知っていたI課長は、同じ課ではなかったので親しくはなかったのですが、会えば朝夕の挨拶を交わしていたし、アルバイト仲間の間では温厚で物静かないい課長だと評判の方でした。
昔からスペインは好きで、NHKのラジオ講座などを長年聴いて、独学で日常会話くらいは話せるようになったそうです。人は見かけによらぬもの。そんな一面があるなんて全く知りませんでした。
I元課長と話しているところに、ホアンがカニャ(生ビール)でも飲みに行こうと誘いに来ました。そこでこのいきさつをホアンに話して聞かせようと思いましたが、私のスペイン語で伝えるより早いと、Iさんに話してもらいました。
ホアンは感心して、
「なんていう偶然なんだろう!俺たちスペイン人だってなかなかよその土地で知り合いになんて会わないのに、あなた達二人、国からこんな遠く離れた所で再会するなんて、こりゃ驚きだな」と言いました。
Iさんとルイシおばさんも誘って、アルベルゲの隣のバルで軽く乾杯しました。
Iさんからは、当時仲がよかった他の営業の社員さんのその後の事などを聞かされました。素敵だったAさんは結婚して間もなく転職したとか、Bさんは5年前に亡くなったとか・・・私の知らないところで人々の人生は刻一刻と変わって行き、そのことを図らずもこういった形で知るなんてね。
Iさんの今回の巡礼は、スペインのロンセスバジェスからレオンまでの予定とのこと。
無理せず、続きは来年のお楽しみにするそうです。一日の歩行距離は20km以内にして、ゆっくり歩いて多くの人と会話を楽しむようにしているそうです。
さて、グラスのビールがなくなるころにはホアンもすっかり落ち着いた様子で、今夜はチャンピオンズリーグの決勝があるから忘れるなよ、と私に言いました。
「マリアノはどうするの?」
「あんなヤツ知らないよ!」
そうは言ってみたものの、それから3分もしないうちに
「スエルテ、あとでマリアノに電話するから、8時前にみんなで集まってサッカー観戦でいいかい?」
私は「Si!!」(イエス!)と元気よく返事をしました。

約束の時間に、サッカー中継をやっている別のバルに行くと、いつもの笑顔でマリアノがやってきました。
「今日はよく歩いたね、スエルテ、調子は大丈夫?」
そう言って、肩をたたいてくれます。
心配していたホアンの方も、さっきまであんなに怒っていたのがうそのように、
「俺たちのアルベルゲにスエルテの昔のアルバイト先の知り合いがいたんだよ、すごい偶然だよなぁ!」
なんて、普通に話しています。
やれやれ、大変な事にならないで よかった、よかった。
サッカーは、チャンピオンズリーグ決勝のモナコ対ポルトの試合でした。最後まで見たかったけれど、いつものように前半戦が終るとバルを出て、それぞれのアルベルゲに戻って行きました。
-つづく-
前回のお話↓
スペイン巡礼の旅20カストロへリスでの奇遇な出来事 その1
続きを読む↓
スペイン巡礼の旅22
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スペイン巡礼の旅 1
スペイン巡礼の旅34 峠まで
スペイン巡礼の旅33 ありがたい習慣
スペイン巡礼の旅32 ロヘリオとルイス
スペイン巡礼の旅31 最もキツイ一日
スペイン巡礼の旅30 リタイアの危機
スペイン巡礼の旅29 初夏の吹雪の正体は…
スペイン巡礼の旅33 ありがたい習慣
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Posted by スエルテ at 14:19│Comments(6)
│スペイン巡礼の旅
この記事へのコメント
奇跡のような出逢いですよねぇ。
だってスペインでしょ?
私だったら、運命感じちゃいます。
それにしても20年前の、しかもそれほど親しくなかった方を覚えているスエルテさんの記憶力もすごいですよ。
だってスペインでしょ?
私だったら、運命感じちゃいます。
それにしても20年前の、しかもそれほど親しくなかった方を覚えているスエルテさんの記憶力もすごいですよ。
Posted by マーティン
at 2008年08月11日 15:19

すばらしい出会いですね。
でも、20年前のバイト先のしかも隣の課の課長さんですか・・・スエルテさんの映像処理能力に感心します。
私も似たような偶然の再会が、ポルトガルのナザレでありました。
私の場合は4~5年振りでしたのですぐ分かりましたが、路上でばったりでしたので、”こんなところであった!”と言う事実の方が信じられずに困った記憶があります。
でも、20年前のバイト先のしかも隣の課の課長さんですか・・・スエルテさんの映像処理能力に感心します。
私も似たような偶然の再会が、ポルトガルのナザレでありました。
私の場合は4~5年振りでしたのですぐ分かりましたが、路上でばったりでしたので、”こんなところであった!”と言う事実の方が信じられずに困った記憶があります。
Posted by 風来末 at 2008年08月11日 15:28
マーティンさん
私もびっくりしましたよ。
でも、残念ながら、運命感じるほどロマンティックではなかったですね~
昔の恋人とかだったら違ってたかも知れませんけどね(*^_^*)
私もびっくりしましたよ。
でも、残念ながら、運命感じるほどロマンティックではなかったですね~
昔の恋人とかだったら違ってたかも知れませんけどね(*^_^*)
Posted by スエルテ
at 2008年08月12日 12:37

風未来さん
ある意味、微妙な知り合いとの再会でした。
風未来さんのポルトガルでの再会も然り、世間は広いようで狭いと感じることがあります。
気付かないうちに、かなりいろんな人とニアミスはしてるのかもしれませんよね。
ある意味、微妙な知り合いとの再会でした。
風未来さんのポルトガルでの再会も然り、世間は広いようで狭いと感じることがあります。
気付かないうちに、かなりいろんな人とニアミスはしてるのかもしれませんよね。
Posted by スエルテ
at 2008年08月12日 12:43

世の中狭いですね~
でも私はすぐに忘れてしまうので きっと何処かで誰かと出会っても
きっと分からないかも・・・
スエルテさんんおお話は楽しいです。
でも私はすぐに忘れてしまうので きっと何処かで誰かと出会っても
きっと分からないかも・・・
スエルテさんんおお話は楽しいです。
Posted by もりひめ
at 2008年08月13日 00:23

もりひめさん
I課長は結構特徴のある方なので覚えていたんですよ。
これからもいろいろな人が登場します。
乞うご期待!
I課長は結構特徴のある方なので覚えていたんですよ。
これからもいろいろな人が登場します。
乞うご期待!
Posted by スエルテ
at 2008年08月15日 14:07
